これは、フィクションです。
ン と ソ
時々、思うんだ。この人混みの中で、叫んでみたいと。大声で「助けてー!」と。別に助けを求めてるわけじゃ無いけど、このモヤモヤした気持ちとか、表現できない気持ちとか、重量が無いのに、ドヨドヨした雨雲に包まれたような息苦しい気持ちとか…。そんな事考えてると、このまま、ずっとこんな感じで生きていくような気がしてきて、希望も何も無いなんて思い始めちゃって、ため息をつくのと同時に、体の中の酸素を全部吐き出しちゃいたい気持ちになってくる。でもね、ダーリンがいるから、わたしには、ダー
「何?そのダーリソって」
急に声がしたので、顔を上げると、美矢子が覗き込んでいた。
「ねーねー、何?」
美矢子は、こういう所がある。遠慮なく踏み込んできて、遠慮なく入り込む。でも、嫌いじゃない。美矢子だから、良い。きっと、他の人だと、大嫌いになると思う。こういうのって…
「何者なの?ダーリソって?」
いやいや、何を言ってるんだ。ダーリ…あぁ、やってしまった。そうだった。つい、文章を書くのに夢中になって、油断していた。私は、子供の時から、ンとソを書き間違える。もちろん、違いはわかっている。なのに、何故が書き間違える。だから、文章を書く時は、すごく集中するようにしているのに。
「書き間違えたの。ダーリンなの。ていうか、なんで、読んでんのよ。」
そう言うと、
「さっきから、声かけてんのに、顔もあげないからさぁー覗き込んでみた。そしたら、ダーリソって…ンかな?と思ったけど、聞いてみた。ひょっとして、ダーリソって、居るのかな?って思ってさ。」と、ダーリソが、かなり気になる様子で聞いてきた。
少しの沈黙の後、
「ね、ダーリソ、探さない?」
二人の声が揃った。
以上、フィクションでした。
昨日、ふと思いついた、話でした。