ぼちぼち ブログ

日常の事をつらつらと

過去作品 その1

USBの中を探し物してたら、

過去の作品見つけた。

 

不思議な扉

 

 

その日も、僕は学校から帰ってきて、玄関のドアの前で考えていた。

「もし、このドアの向こうに宇宙が広がっていたら・・・」

僕は、大きく息を吸って、ゆっくりドアを手前に引く。

息を止めて、ゆっくりゆっくり、中を覗く。

その時間が大好きなんだ。

僕が、家の中を覗こうとして、ドアに体重をかけた時に、ドアが別の力で動いた。

「うわぁ!」

僕は、ドアに押されて、バランスを崩してコンクリートの廊下に

転がった。

「やだ、ジュンは何してるの?」

ママが、困った顔をして僕を見ている。

僕は、ママの困った顔が大嫌いだ。

僕が何を考えているかわからないって、まるで顔に書いてあるみたいに、

見えるからだ。

僕は、自分の楽しみを否定された気分になって、ムッとして、「ただいま」とぶっきらぼうに言うと、そのまま部屋に入った。

ランドセルを肩から下ろして、ベッドに放り投げる。

僕のママへのささやかな抵抗。

 

僕は、玄関のドアの向こうに、どんな世界があるかを考えるのが好きなんだ。

思い浮かべるものは、その日によって違う。

深い深い太陽の明かりなんて届かない暗い海の底だったり、

僕の知らない誰か別の人の家だったり、

どこまでも広く、ただ風が通り過ぎる草原だったり、

音も何にも無い空間だったり、

果てしない宇宙だったり・・・

僕が、玄関のドアの前に立つと、イロイロなイメージが浮かんでくるんだ。

普通に考えたら、そんなことは、ありえないんだけど、でも、僕は、それを考えると、ドキドキしてとても楽しくなる。

ひょっとしたら、いつか、時空が捻じ曲がって、未来や過去へいくかもしれない。

それとも、もう1人の自分に会えたりするかもしれない。

あの玄関のドアは、僕にとっては「不思議な扉」なんだ。

僕が、そんなことを考えていたら、部屋のドアがノックされた。

 

トントン

 

ママだ。ママは、いつもぼくの邪魔をする。

「何?」

僕は、さっきのママの顔が忘れられなくて、

どうでもいいような気分で返事をした。

 

トントン

「だから、何?」

僕は、少し怒ったような声を出した。

でも、ママは、入ってこようとしない。

きっと、オヤツを持ってるから、開けられないんだ。

僕は、「もう、面倒くさいなぁ」を小さくつぶやいて、ドアに向かった。

 

トントン

 

ドアの向こうからは、相変わらずノックの音が聞こえる。

「あれ?おかしいぞ」僕は、ドアの前に立って、思った。

 

だって、ママだったら、「オヤツよ」って言う。

それに、ママはさっき買い物に出かけたばかりだ。

ってことは、ノックしてる人は、ママじゃない。

誰だ??

 

 

僕は、向こう側の様子を知ろうと、ドアに耳をつけた。

 

トントン

 

でも、ノックする音しか聞こえない。

誰なんだ?

泥棒?でも、泥棒ならノックしないだろう。

殺し屋?殺し屋こそ、ノックなんてしない。

僕は、大変な事件に巻き込まれているのかも?

僕は、背筋が少し寒くなった。

 

トントン

 

ノックは相変わらず止まない。

もしかしたら、不思議な扉は、玄関のドアじゃなくて、僕の部屋のこのドアかもしれない。

このドアは、知らない世界と繋がったのかもしれない。

 

ドアの向こうの知らない世界・・・。

僕は、ドキドキしてきた。

そして、いつもするように、ゆっくり息を吸い込んだ。

ドアノブに、手をかけ、ゆっくり回した。

僕は、映画でよく見るスパイのように、ドア側に身体を寄せ、ゆっくり開いた。

すると、ものすごい勢いで、何かが飛び込んできた。

僕は、思わず、身体こわばらせて、目をギュッとつぶった。

「おにーーーちゃん!!!」

聞き覚えのある声に、僕が目を開けると、隣のマリちゃんが立っていた。

「おにーちゃん、かくれんぼ♪ みーつけた!」

ドアに張り付いている、僕を見つけて、マリちゃんは、にっこり笑った。

「次、おにーちゃん、オニーーー!!」

そう言って、マリちゃんは、部屋を飛び出して行った。

 

僕の胸は、ものすごいスピードで、ドキドキしていた。

あぁ びっくりした・・・・・・。

「もーーいいよぉ」

マリちゃんの声が、聞こえてくる。

僕は、その声に、ホッとしていた。

そして、違う世界って、やっぱりちょっと怖いなって、思った。

 

 

おわり